手汗とは?
手のひらだけに大量に汗をかいてしまう「手汗」という症状。
「手に汗握る」という言葉があることからもわかるように、緊張した時などには、誰でも手に汗をかくのが当たり前なのですが、常時手に大量の汗をかいてしまい、それを悩んでいる人がいます。
体の特定の部位のみの多汗症のことを「局所性多汗症」といいますが、その中でも手のひらだけに症状が出るのが「手掌多汗症」。
ある調査では全人口の約5.3%の人が手掌多汗症なのだとか。
その中でも、汗の量によって3つのレベルがあります。
◆レベル1
手のひらがいつもしっとりと湿った状態。汗が流れるほどではないけれど、触ると汗ばんでいるのがわかります。
◆レベル2
手のひらが明らかに「濡れている」とわかる状態。でも滴り落ちるほどではありません。
◆レベル3
気がつくと手のひらの汗が指などからポタポタ落ちてしまうほど汗が出ている状態。
どのレベルにおいても、これだけで病気とはいえません。
けれども、手汗に悩んでいる人にとってはそのレベルに関わらず大問題。
「恥ずかしくて、恋人と手をつなげない」、「仕事でうっかり書類を触ると手の汗が染みてしまうので、ハンドタオルが手放せない」、「スマホが汗で濡れて滑る」など、日常生活のいろいろな場面で不便やコンプレックスを感じているケースも少なくありません。
手汗の出る理由
特別緊張するシーンでもないのに、突然手汗をかいてしまう、または日常的に手汗が気になるとき、その理由はいったいなんでしょうか。
そのメカニズムや日常生活での改善法は?
手汗が病気のサインである可能性は?
手汗を医学的観点から見ていきましょう。
手汗のメカニズム
汗には、体温が上がった時に体から熱を発散させて正常な体温を保つために分泌される「温熱性発汗」と、精神的に緊張したり興奮したりすることによって交感神経が刺激されて出る「冷や汗」といわれる「精神性発汗」があります。
とくに暑いわけでもないのに、手のひらや足の裏に汗をかくのは、おもに「精神性発汗」の場合が多いようです。
これは誰にでも起こり、珍しいことではありません。
通常、気持ち落ち着けば副交感神経が優位になって手汗も引いていきます。
しかし手汗自体を気にしすぎると、それが緊張状態を引き起こし交感神経優位のままになってしまいます。
当然手汗も出続けることに。
手汗に悩む人の多くが、緊張しやすく、いろんなことを気にしやすい(だから手汗も気になる)性格のことが多いのです。
誰でも手汗はかくもの。ホントは気にしないのが一番
緊張した時、誰でも手に汗をかきます。
これを利用したのが嘘発見器と呼ばれる「ポリグラフ」。
ウソをついたときに緊張して出る手の汗の量や脈拍、呼吸の変化を検知して、証言が嘘か本当かを判断するものです。
人間なら当たり前の生理現象というわけです。
でも手汗を必要以上に気にしたり、抑えようと焦ると緊張したときに働く交感神経が優位になって、よけい手汗を増やしてしまいます。
つまり気にすれば気にするほど手汗はひどくなり手汗の悩みもそれだけ深くなってしまうのです。
あまり手汗を気にしないことが一番大切な解決ポイント。
けれど、医師や周囲が「気にしなければ、大丈夫」とアドバイスしてくれても、一度気になり不安になってしまうと、なかなかそうもいきません。
そんなときは日常生活の改善や手汗の制汗対策アイテムを利用することで、手汗に関する緊張をほぐし自分自身が「大丈夫」と自信が持てる環境を作りだすことが大切です。
日常生活での手汗改善方法
日常生活で手汗を改善するポイントを箇条書きにしてまとめました。
◆ストレス軽減
気圧(高気圧)や気温(低気温)によって、緊張を引き起こす交感神経が刺激されやすくなります。そんな日は自分流のストレス解消法(お風呂にゆっくり入る、カラオケで大声を出す、体を動かす、アロマを宅など)を意識的に行ってリラックス。
◆食生活
バランスがとれた規則正しい食事は自律神経を正常化させます。手汗予防に避けたほうがよいのは、発汗性のあるトウガラシなどの香辛料やスパイス、交感神経を刺激するカフェインを含むチョコレートやコーヒーなど。また肉料理やチーズバターなど脂肪分の高い食べ物も体温を上げて発汗を促すので大量に食べすぎないほうがよいようです。
◆睡眠
生活リズムを整え、きちんと眠って3食食べると体内時計が整います。これにより体内時計をつかさどる自律神経も調整でき、交感神経優位の緊張状態がほぐれます。質の良い睡眠もリラックスには重要です。
◆手汗解消のツボ
代謝の異常を正常化する「合谷」のツボは、優位になりすぎた交感神経を落ち着かせる効果があります。合谷は、手の甲の親指と人差し指の付け根の骨の間にあり、押すと「痛気持ちいい」ツーンとした感覚のある場所。指の先で30秒ほど押しつづけます。
注意したい手汗 全身の汗がひどいときは病気の可能性も
手汗だけが気になるときは、自律神経の軽い不調やホルモンバランスの乱れが考えられますが、大病の可能性はほぼありません。
注意したいのは手だけでなく全身の発汗が激しい場合です。
急に全身にどっと汗をかくようになった場合は、念のために以下の病気のケースを疑い、なかなか症状が治まらない・悪化するようなら、すみやかに受診しましょう。
◆自律神経失調症
自律神経のバランスが崩れ、体のあちこちに症状が現れます。ほてりや微熱、発汗なども症状のひとつです。
◆更年期障害
閉経前に女性ホルモンの分泌が急激に低下し、ホルモンバランスが乱れることから自律神経もバランスを崩してしまいがちです。「ホットフラッシュ」と呼ばれる、大量の汗が噴き出すように出てほてる症状もよく見られます。
◆甲状腺機能亢進症
甲状腺異常が起こり、機能が以上に活発になってしまったことで、甲状腺ホルモンが大量に分泌される病気です。代謝が異常に上がることから、大量の発汗、動悸、息切れ、手の震えなどが症状として現れます。
病院で受けられる手汗の治療
「手汗」が気になるだけなら病気ではありませんが、手汗で日常生活に不都合を感じる場合は、病院で手汗をコントロールするための施術を受けることもできます。
各種手汗治療の方法や、使われる薬についてみていきましょう。
手汗・手掌多汗症の治療とは
手汗が気になる症状を、医学的には「手掌多汗症」と呼びます。
おもに皮膚科や美容外科、精神科などで治療が受けられます。
手掌多汗症治療の方法には以下の4つがあります。
1 イオントフォーレシス
汗腺にダメージを与えることで、汗の生成自体を抑制する治療法です。微弱電流の流れる水に手のひらを20分程度浸します。治療は定期的に受ける必要がありますが、家庭で使える機器を購入することもできます。
2 心身療法
ストレスや不安を取り除くことで、交感神経優位の緊張状態を正常に戻していく治療法です。メインはカウンセリングですが、自己暗示をかけてリラックス状態を促すトレーニングを行う「自律訓練法」や、精神安定剤などを用いて緊張を緩和する薬物療法などがあります。
3 薬物療法
汗腺や発汗を促すアセチルコリンに働きかける薬効成分で、汗の分泌を抑えます。
*各種薬物については、この下の「手汗・手掌多汗症に使われる薬の種類と効果」を参考にしてください。
4 手術
わきの下の皮膚を小さく切開して内視鏡を挿入し、手のひらにつながっている交感神経を切断する手術です。発汗の指令が遮断されるため、手のひらの汗を止める効果は確実ですが、手のひらの汗が出なくなるかわりに、ほかの部位の発汗が増す「代償性発汗」が起こるケースが少なくありません。
手汗・手掌多汗症に関わる薬の種類と効果
医師から処方・施術される手掌多汗症改善のための薬には、以下のようなものがあります。
それぞれ診察を受けて、問診をしたのちに処方されます。
薬ですから、使用法を守って正しく使いましょう。
◆神経遮断薬
汗の量を抑えるために、発汗を促すアセチルコリンの放出を妨げます。
◆塩化アルミニウム外用制汗剤
汗が気になる部位に塗ることで、汗腺をふさぎ、発汗を抑制します。就寝前につけて朝になったら洗い流します。
◆ボツリヌス注射(ボトックス)
多汗が気になる部位に注射することで、アセチルコリンの放出を妨げ、汗の分泌を低減させます。1回の注射で半年ほど効果が持続しますが、保険適用外のため治療費は高額になりがちです。
